古民家改築②〜小郡に決めた理由〜

小郡というと、「西鉄沿線の福岡市のベッドタウン」の印象が強い方にとっては、そこまで安い土地があるとは思えないかもしれません。

 

確かに小郡市内でも地価が高い地域があります。西鉄の急行停車駅である三国ケ丘駅小郡駅周辺などは地価が高いです。ところが西鉄から東側の甘木大刀洗の宝満川方面にかけてはひたすら農村地帯が広がっています。不動産情報を見て、この農村部の土地の売り出し価格が安いことに気がつきました。もともと僕のあこがれていた果樹園や植木屋さんが立ち並ぶ田主丸周辺は移住希望者も多いせいか、農村地帯ではあるものの、久留米市への通勤圏内で人口も多く、そのために物件価格も高く、残念ながら予算オーバーでした。そんなとき何気なく検索した小郡は、なぜかはるかに安値なことに気がつきました。

 

福岡市から久留米市の中間地点なのに、まだぽっかりと安い土地が残っている場所。

都市と田舎の中間点のような場所。

 

小郡は高速道路も通っていて、高速バスを利用して天神、博多、大分方面、福岡空港にも行けます。小郡から10分ほどの基山インターで乗り換えることで、九州各地にもアクセスできます。ついでに甘木鉄道を経由して、JRと西鉄へのアクセスもいいです。農村部ではあるけれど、福岡市内や各地の交通アクセスも便利なことに気がつきました。

 

僕には都市部と田舎部のどちらへもアクセスがしやすい点が魅力的でした。

 

よくよく考えてみると、小郡にまだ開発から取り残された土地があることに気がつきました。小郡の情報を集めるため市役所のホームページに掲載されている事業計画書を読みました。久留米市筑前町には道の駅があるのに、小郡市には直売所はあるものの道の駅はなく、まだ計画中のままでした。主力の野菜は小松菜、水菜ですが、小郡産であることを売りにした作物はありません。水にも土地にも恵まれているのに、もっと名前を売り込んで地域をブランド化していこうという動きは感じられません。小郡市の都市計画を読んでいると、重視しているのは、三国ヶ丘周辺の人口増加が見込める地帯のようでした。西鉄沿線以外は市街化調整区域で、開発は制限されています。西鉄沿線の福岡都市圏への通勤するサラリーマンであり、小郡へ移住してきた人と、昔ながらの農村地帯の人々と、市内は人的にも地理的にも分断されているように感じます。

 

土地は、東から伸びる甘木、大刀洗からの台地が宝満川に削られて尽きる場所。台地のキワは、ちょっとした崖になっていて、放置された竹林や雑木林。台地のキワには台地に降った雨が湧き出し、豊富な地下水があります。そして福岡では珍しい、黒ボク土が分布しています(実家の庭は、粘土、砂利石混じりの白っぽい真砂土でした)。黒ボク土は、深さ3,4メートルまであり、大根や人参、さつまいも、じゃがいも、落花生などの根野菜には最適です。水はけがよく、雨の翌日でも畑仕事が苦になりません。石も少なく、作業がしやすい土です。NHKの『趣味の園芸』で映し出される、東京西部の黒ボク土にあこがれていた福岡の少年であった僕は、あんなサラッサラの培養土みたいな土地で野菜をつくってみたいなと思っていたものの、福岡には存在しないと思っていました。もちろん、関東の黒ボク土とまではいかないものの、合格点な土が広がっています。一方で、低地は水害の心配がありましたが、僕の買った土地は微高地にあり、集落の過去の言い伝えでも水をかぶったことがないところでした。

 

買い物は、車がないとたしかに不便です。歩いてすぐのコンビニ、スーパーはありません。しかし、車で10分足らずに大きなイオンがあるので、そこに入っている百均や、電気屋さん、もしくは車で5分ほどで大きなホームセンターにもいけます。甘木鉄道を使えば、小郡駅西鉄に乗り換えて天神にも行けますし(片道690円 約1時間)、基山駅でJR鹿児島線に接続しているのでそこから博多駅(片道770円 最短42分)にもいけます。車で朝倉市には15分ほど、久留米市へも30分、福岡市内へ下道50分、高速で30分ほどです。

 

意外と便利なのに、行政からも見放され(?)、おしゃれカフェが続々と生まれ、移住者も増え、産地のブランド化が進む糸島や福津のように地元メディアからも注目されず、でも実は今後の可能性を感じさせる場所。

 

そういった状態なのが僕としては魅力的に見えました。

 

それから不動産情報をまとめたサイトから小郡を条件に追加して検索していきました。

すると、

 

売地価格:300万

土地面積:約455坪

地目:宅地

現状:古家有

都市計画:市街化調整区域

設備:電気、井戸

 

 

上のような条件が記載された物件が見つかりました。

 

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購入時の荒れた南側の庭先。

 

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倉庫は扉が壊れ、竹やぶが押し寄せていました。

 

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家の北側は密林状態でした。