なんで料理、レシピ本に心惹かれてしまうのか

母は仕事をしていたので忙しく、父は食に関して保守的だったため、日常生活においては、世の中にさまざまな食べ物があるというのをあまり知らずに育った。ごくたまに、家族で外食をしたときに(それも決まったお店だったが)家とはまた違う種類のおいしいものが存在すると知った。

 

中華料理は、福岡市博多区麦野にあったウエストの中華によく行っていた。ニンニクの茎と牛肉の炒め。「角煮まんの皮」(割包)が好きだった。今思えば、結構ちゃんとしていたと思う。本心では食べたかった「パーコー麺」は、値段に勝手に遠慮して頼めなかった。お金を使う罪悪感が芽生えたのはこの頃だったのだろう。今思えば食べておけばよかったと思う。あの写真のようなパーコー麺は、身近で食べられるところを知らない。今のウエストは行っていないけど、ネットで見るメニューとは大きく変わってしまっている。今思えば、30年近く前にあのクオリティは不思議だ。

 

18歳になり、東京へ行った。東京でもお金を使うことに対する罪悪感は増すばかりだった。外食したくなくて、一生懸命自分で作ったものを食べていた。お昼は大学から帰って食べて、また午後に大学へ行くみたいな生活をしていた。大学のそばに住んで、あちこちのスーパーに自転車で買い物に行っていた。調味料や食材はワンルームの部屋を満たしていた。

 

池袋のジュンク堂書店で、レシピ本の世界に出会った。欲しくなるのはマニアックで高価な本ばかりで、欲しいけど高くて買えなかった。当時はネットで古本を探すことはできなくて、店頭での古本のレシピ本のなかからは、あまり好きなものを見つけられなかった。

 

今はネットで中古が安く買えるのが嬉しくて、その当時の自分の「飢え」を満たすように買っている。大学のサークルで、バックパッカーのサークルに入って、自分自身も旅に出るようになった。やはり市場、屋台に行くことがとにかくメインだった。本と旅のおかげで、どんどん自分の世界が拡がっていった。