漠然と、「豊かな時代」は続かないと思ってきた。
「貧しくとも尊厳を持って生き延びるには」
「貧しさとどう折り合いをつけていくか」
がなんとなく生きる命題のようなものになってしまって、
「そんな辛気臭いこと考えるより、それよりももっと就職とか」と蓋をしたがる「世間」とのずれが気になって仕方がなかった。
ナウシカの漫画版を読んだのは小学5年生だった。担任の先生がクラスにいろいろな本を持ってきていて、その中にあった。(あとは あさりよしとおの学研のまんがサイエンス)近代文明が滅びたあともなお、残された土地や富をめぐって争う人類、戦いの中だからこそ生まれる人間ドラマ、背景の世界の物語。
テクノロジーが発達したとて、経済が発達したとて、人間が本来持っている欲はコントロールできず、一度破滅を迎えてもなお、またそれを繰り返してしまう。だったら根本的に人間そのものを(以下略)
読後に取り憑いた、「技術や経済が発展したとて、いずれは崩壊してしまうし、その後に何が残る?」そんな疑問に対する答えを求めて、高校大学、その後いろいろな人の本を読んで、なんとなくたどり着いた答え。
ナウシカが物語中で、心身ともに疲れ切ったときに、ほんの一瞬その疲れを忘れさせてくれたのは、近代文明の徒花としての文化、芸術が保存された秘密の場所だった。
僕自身も経済発展の「徒花としての文化芸術」に触れていると、つかの間だが、憂を忘れることができた。
「徒花」と括ってしまうのは大変失礼かもしれないが、過去の出版物(最近のものも、もちろんいい本がある)を読んで、美しいものに触れるとなんともおだやかな気持ちになれる。
豊かな時代の植物、食文化アーカイブとしての秘密の場所。
過去の遺産を後世につないでいくための場所。
次の時代のための「芽吹き」を待つための場所。
そんな場所を作っていくこと。
ここで自分自身も「芽吹き」を待ちたい。