これまでのこと~「引きこもる人」は今日もがんばっている~

僕は引きこもり経験者です。2年くらい、母親としか話さない時期がありました。元引きこもりの思いを書いてみようと思います。

 

引きこもってた関係の人が事件を起こすと、コメント欄にたくさんの心無い書き込みが出てきます。引きこもりに対するたくさんの意見や思いが書き込まれていますが、書き込みをしている人は、引きこもりの気持ちがとことん理解できないんだろうなと、絶望的な気分になります。実は、「引きこもりを攻撃したくなる心理」と「引きこもってしまう心理」って、表裏一体で同じものなんですよ。そういうのも理解できないままに、たくさんのコメントが似たようなことを言っています。そういうのを読んでも、まったくつまらないので、自分で文章を書いてみたいと思います。

 

簡単に言うと、「引きこもり」は「(多くは親に対しての)消極的抵抗」「社会的ハンガーストライキ」(後述)だと言えると思います。わかりやく「荒れる」「ヤンキーになる」というようなことが心理的にできない人たちが、引きこもります。

 

社会的ハンガーストライキとは、通常の「(肉体的)ハンガーストライキ」と対照をなすものです。絶食して自分の体を痛めつけ、痩せ衰えた、憔悴した姿をさらすことで、周囲を慌てさせて自分の意思を伝えようという行動ですが、社会的ハンガーストライキは、自分の社会的地位をわざと落とすことで、自分の意思を伝えようとしている行動です。

 

自分が社会的に求められている(と思っている)、「学校でたくさん友達をつくって、いい成績をとって、明るく楽しいふりをして、就職して、いい会社員として認められて(金銭的収入を得て)、異性から想いを寄せられて(寄せて)恋愛をして、結婚して子供ができて、家を建てて、子供も健全(自分の理想的に)に育って、、、」というようなことを全て否定して、さらに、あえて「社会のお荷物」として生きること。普通の人からみたらバカなんじゃないかと思われるでしょうが、本人は全身全霊をかけて、社会に対する精いっぱいの抵抗をしています。それが自分のできる唯一最高の方法なんだと信じて。もしくは、もういろいろ無理、、となって、辛いもの、見たくない現実を必死で脳みそから離すために、ゲームやネットを寝ずにやり続けたり。それはそれで、はたからみると「遊んでる」ように見えるんですが、内心は、暗い山道をクマや盗賊から追いかけられているような必死な気持ちなんです。

 

「引きこもりを攻撃する人」と「引きこもってしまう人」と表裏一体かという理由なのですが、どちらも、上に挙げたような薄っぺらな「社会的成功」を、崇高な姿として、唯一絶対視しているところがあります。あるべき「社会的な姿」にそぐわないから、そこから外れた他者を攻撃したくなる気持ちと、あるべき「社会的な姿」ではない自分をあえてつくりだすことで、他者(多くは親)を攻撃する「引きこもり」。持ってるものは実は同じなんですよ。

 

どちらも、その「社会的成功を夢見て努力すべき」 という思想には間違いがあるとは全く思っていない。攻撃する人は、 「俺たちはこんなに苦労して頑張っているのに、ドロップアウトするなんて意気地無しだ」 と思っている。自分だけが苦労していると思うと苦しいので、引きこもるのは悪で、必死で 「学校への登校→就職一結婚→出産→子育て· ·」 を皆にさせようと努力する。「ドロップアウト」することについて、あまり深く考えないようにして、思考停止をしているから、まったく知識も無いせいで、恐怖でしか無い。これらの人は、恐怖について考えないようにしながら、がんばって生きているんですね。

 

ただ、いろんな挫折があるのは付きもの。うまくいくことばかりではない。引きこもる人は「ドロップアウト」についてこれまで考えないようにして、頑張ってきたから、 いざ挫折してしまうともう「ダメだ。もう終わりだ· ·」 モードになってそこから「もう死にたい」モードになって、これまでやりたくもなかったのに、 苦労してきた恨み辛みが暴走して、とことん「お荷物になってやれモード」と「死にたいモード」 の行ったり来たり状態の「引きこもり」 になってしまう。 引きこもりになるひと、 ならないひとの違いは、「社会的成功を夢見る思想」 をどれだけ深く内面化してきたか、の違いかなと思います。 周囲の人と、その人自身にこの思想が深く内面化しているほど、挫折から引きこもりまでスムーズに一直線に、流れていってどんどんと重症化してしまいます。たぶん、この文章はかなり重症化した引きこもりの人本人や、引きこもり沼へと沈んでいく過程にある人。自分は引きこもりなんかにならない、他人事だと思っている人には届かないとは思います。ある程度引きこもり期間を経て、すこし世間と距離をおいたことで回復期にあるけれど、これからじゃあどうしようと思っている人とか、引きこもりになってしまった人の周囲の人などがたまたま検索してたどり着くのかなと想像しています。

 

特に伝えたいのが、引きこもり周囲の人(親)に対してです。「とりあえず働動いてほしい」「正規でなくてもいいからパイトでも」「そうすればいずれ結婚して孫の顔が」という思想が、本人を内と外から長年傷つけて、結果として引きこもってしまいました。長年やってきたことなので、もう手遅れですし、あなた自身に内面化されているので変わるにとも難しい。できるなら、あなた自身が引きこもりの人に対して「刃」 なので、距離を取った方がいいかなと思います。 距離が近いとつい普段思っている言葉を口にして、相手を傷だらけにしてしまうから。

 

引きこもりをもつ家族へ言いたいのは、とりあえずは、引きこもりへのアプローチは、ご飯や洗濯など、身の回りのお世話だけで十分だということです。慌てて、なんとかしなきゃとか、どうしようと悩む姿は、ますます引きこもりを悪化させてしまいかねません。社会に疲れた引きこもりや、親に恨みがある引きこもりに対して特に。

 

いずれ、自分自身がどう引きこもりから一歩踏み出そうと思ったかを書きたいと思います。

 

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